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2006年09月17日

父と息子。

発車寸前の東海道線に滑り込む。体勢を立て直す前に電車が動き出したので慌ててつり革につかまった。

一息つくと、目の前の男性二人組が気になり始めた。どうやら結婚式に行く途中らしく、黒いスーツに白いシルクのネクタイを締めている。ぶっきらぼうに招待状を手渡している様子をみると親子らしいのだが、これが全くもって似ていない。

父親と思しき男は、50代半ばといったところだろうか。だいぶ白いものが混ざった髪をきっちり七三にわけ、フチ無しメガネをかけた目はややうついむいている。おとなしそうな、でも生真面目で厳格そうな雰囲気を漂わせている。どちらかといえば痩せ型だ。

一方、息子はちょっとワルっぽい雰囲気で、金に近い茶色の髪をツンツンに立たせ、耳からiPodのイヤホンをぶら下げている。腕を組んでシートにもたれかかり、目はいかにもめんどくさそうに閉じられたままだ。ダークスーツとスニーカーソックスの間から足首がのぞいているところを見ると大学生だろうか。

とにかく、全く似ていない。人の顔の造作を観察することにかけては多少自信のある私だが、それでも鼻の形にそこはかとない相似形を見出すのが精一杯だ。あまりにもつながりが見えないので、他人事ながらここの家庭は大丈夫か、といらぬ心配をし始めた。

そのとき、父親が息子の肩をとんとん、と叩き「おい」と声をかけた。息子は「ああ?」と言いながらイヤホンを外す。
「何?」
「鉛筆かしてくれ」
息子は何も言わずに膝に置いたトートバッグをあさりはじめた。差し出した手に握られてたものを見て、わたしはちょっとびっくりした。

それはところどころ塗装が剥がれ、ボコボコになったスヌーピーのカンペンケースだったのだ。

年季の入り方から推察するとおそらく小学生ぐらいの時から使っているものだろう。父親は息子の手からごく普通にそれを受け取った。

それをみて「ああ、間違いなくこの二人は父子だ」と妙に納得してしまった。堅物親父とチョイ悪息子とスヌーピーのカンペンケースが一直線上に並んだ。

「そういえばアゴの骨格がそっくりね」などと思ってしまうのだから私の観察力も大したことは無いもんだ。

投稿者 yosim : 2006年09月17日 19:26

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